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主にフランスの流れを汲むクラブミュージックに関する雑記です。

mylo


いまやヨーロッパのクラブシーンの中心にいるといっても過言ではないのがこの「mylo」。
デビュー盤がリリースされて1年もたたないうちにフジロックに招かれていたことからも、彼の勢いがどれほどのものかをうかがい知ることができるかと思います。

ただ自分が彼の存在を意識したのはちょうどそのフジロックの少し前、本国で大ブレイクしてから遅れること半年以上という体たらくでした。

それというのも自分は「daftcrew」と呼ばれる「daft punk」を中心としたコネクションに属するアーティストたちの音楽が非常に好きだったのですが、2年位前から彼らのリリースする作品になんだかパワーダウンを感じたことから「このムーブメントももう終わりかな」なんて思いクラブミュージックから遠ざかってしまっていたためです。
(もちろんそのとどめとしてdaft自身のあの3rdアルバムがあるわけですが・・・)

そして「mylo」、彼のアルバムを聴いてみてまず感じたことは、彼の音が意外にも先に触れたようなフランスのハウスシーンの音を継承しているように聴こえたことでした。(「mylo」はスコットランド出身。)
強いて言えば「in my arms」に見られるようなサンプリング素材をフィルター処理した質感は「daftcrew」に属する「demon」、そのセンチメンタルなコード感やボコーダー、シンセ使いは「ernest saint laurent」に近い感じを受けます。
またクリックハウス的なトラック等もフレンチシーンの昨今の流行でもあります。
(このアルバムに多く収録されているダンスミュージック以外のトラックについては、多くの人が示唆しているとおりもう一人今のクラブシーンを語る上で無視できない存在「royksopp」の影響であると本人も認めています。
彼もまた「daftcrew」の重鎮「alan braxe」と親交があること等興味深い事実が多々あるのですが、詳しくはまた別の機会に触れてみたいと思います。)

そしてそれを裏付けるため「mylo」と「daftcrew」との接点を探ってみると、まだ「mylo」の出世作「destory rock & roll」が話題になる前の2003年頃、「daftcrew」の末っ子「aloud」のヒット曲「rockyⅩⅢ」のremixを担当していたことがわかりました。
(実はこの12インチを購入していたのですが、当時「mylo」の事はまったく意識していませんでした。)

また先日彼がリリースしたmixCD「drop the DJ mix」にはずばり「daft punk」の「robot rock」、そして「daft punk」の片割れ「guy-manuel」の弟「play paul」のトラックが収録されています。

とどめにはインタビューでも影響を受けたアーティストにはちゃんと「daft punk」の名をあげてくれていました。

ただ一方で彼の音楽は今まであったものをより洗練させたものであり、やはり「prodigy」、「the chemical brothers」、「underworld」、そして「daft punk」と言ったシーンに名を残していった人々に比べると強烈なオリジナリティの不足を感じえないのも事実です。

ただそのデザインワークのセンスのよさ、(いちいちジャケのデザインが格好いい!)また何よりも彼の出世作でありアルバムタイトルにもなっているトラック※1「destroy rock & roll」に歌詞において、さまざまな大物アーティスト達を「destroy」の言葉と共に名指しした過激な姿勢が、パンクを生んだ国イングランドで支持される要因になったと考えられるかもしれません。

以上のことから、すぐに消えると評したイギリスの音楽誌の評にもそれなりの信憑性はあります。
しかし彼の登場によって今まである一定の人たちの支持を受け、単発のヒットはいくつか飛ばしながらも決してシーンの中心に来るまでには至らなかった「daftcrew」を中心としたハウスミュージックシーンが、ヨーロッパのクラブカルチャーの震源地ロンドンの中心に位置しているという状況は個人的には十分に意義深いことです。

また近日来日が予定されているようなので、興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに自分もフジロックに行けなかったので、今回見に行く予定です。
http://www.higher-frequency.com/j_news/november05_d/16/1.htm

>1月12日(木) LIQUIDROOM, Tokyo _ 18:00~
>ADV: Y 5,300
>Line Up : Mylo, SHINICHI OSAWA (MONDO GROSSO), TAKAYUKI SERINO (GANBAN NIGHT)

mylo」のインタビュー
http://www.higher-frequency.com/j_interview/mylo/index.htm

mylo」の公式サイトの視聴ページ(アルバムのヒット曲などを視聴できます)
http://www.mylo.tv/mylo/music.php

※1)
個人的にはこの「destroy」のメッセージは個人的にはリスペクトの裏返し、洒落のようなものであると解釈しています。
実際に「destroy」と名指ししている「prince」に関しても彼自身のmixCDでトリに使っていることからもわかります。
むしろそうでなければ「prince」の方が彼のmixCDに楽曲使用の許可を出すことなどありえないでしょう。
(ただ「prince」は「the space cowboy」によってremixされ、おそらく「one more time」以降最大のクラブヒットとなったトラック「I would die 4 you」によって多大な恩恵を受けたので、クラブシーンに対して寛容になっていると考えることはできます)

またこの「destroy」と言う言葉はpunkの代名詞「sex pistols」によって連呼されていたものと言うよりは、彼「mylo」はオックスフォード大学で哲学を専攻していた事実からも現代のフランスの哲学者ジル・ドゥルーズがその著書「アンチ・オイディプス(l'Anti-Oedipe)」において繰り返し記述されていたものからその着想を得たという可能性も大いに考えられると思います。
ここも誤解が多いのですが、現にそのドゥルーズの「destroy」も「エディプス・コンプレックス(le complexe d'OEdipe)」に向けられたものであっても、その概念を提唱した精神分析学者フロイト自身への批判では決してないからです。
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  1. 2005/11/24(木) 16:48:16|
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  1. 2005/11/23(水) 08:03:20 |
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  4. [ 編集 ]

長いな(w

書きたいことをまとめて書くとこのくらいの分量になっちゃうんだよな。
まぁ、ブログ更新続けられるよう頑張ってください。

あ、チケットのゲットをおながいします。
  1. 2005/11/27(日) 01:23:31 |
  2. URL |
  3. Nyctereutes procyonoides #qfe1dUzA
  4. [ 編集 ]

そうだね。
どうまとめたもんかと正直悩んでるかな(笑)
まあ慣れしかないよね。
  1. 2005/11/28(月) 00:25:21 |
  2. URL |
  3. lapin #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

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Myloがんばった

House Music Awards 2005 の結果が発表http://www.higher-frequency.com/j_news/november05_i/25/2.htmMylo頑張った28項目中の2つでアワードとっちゃったよDefected(最近知った) もいいけど、Myloすごいじゃーん
  1. 2005/11/29(火) 02:10:27 |
  2. Nyctereutes procyonoide