既に様々なDJの間でそのbootleg盤の方がスピンされていたようで、このシングルより先んじてリリースされた「mylo」彼自身のmixCD「drop the dj mix」にもこのトラックが収録されていますが、それもまたbootlegの方です。 実際CDのクレジットにはおそらくbootleg盤を製作したのであろう「Ian & Dog」の名義が表記されています。
彼は若干20歳にして、その若さからは想像もつかないような完成度の高いアルバム「midnight funk」をリリースしました。 ローテンポで渋めのトラックが多い中、ボーカルネタをフィーチャーした割と派手めなハウストラック「you are my high」が翌年シングルカットされるとそれが大ブレイク。 これはフレンチシーンを紹介すべく作られたコンピレーションCD「my house in montmartre」にも収録されている程です。
当時「daft punk」を超えて新しいポップ・イコンに成れる可能性があるのは彼しかいないとか期待したものですが、実際には「daft punk」の「face to face」のremixを聴いたのを最後にあまり音沙汰を聞かなくなってしまいました。 (一応彼のサイトは更新されていますし、さほど話題にはなっていませんがリリースもしているようです。)
そして皮肉にも今その位置に「mylo」がいるような気がします。
ポテンシャル、センス、先駆性では決して彼に引けをとってないと思える「demon」。 西麻布のYELLOWで「you are my high」、「if I ever feel better(buffalo bunch remix)」、「vertigo」と言ったフレンチヒットを次々とかけて無邪気にはしゃいでいた彼の姿を思い出すにつけ、どうにかもう一旗上げてくれないものかなと思ってしまう次第です。
具体的には「mylo」が影響を受けたアーティストに彼をいの一番にあげていたり、おそらく今一番勢いのあるDJ「2manyDJ's」こと「soulwax」もリリースから5年以上も経つ当時の彼のトラックをスピンしていました。 そして極めつけはシトロエンの車がロボットに変形することで最近話題をさらった現地CMのBGMに、やはり彼の当時の作品「jacques your body(make me sweet)」が使用されていると言うのです。 一般にこうした現象はクラブシーンにおいてあまり見られない事に思えます。
個人的なことですが、確かに当時のアルバム「dark dancer」は非常によく聴いたうちの一枚でした。 ややシンセの音が野暮ったく、エレクトロっぽ過ぎるかなと思いながらも非常にファンキーでポップな感じが非常に好みでした。 あとDJをやる折にも「cassius」の「feeling for you」の彼のremixには当時結構お世話になった記憶があります。 ただだんだんとその名を聞かなくなり、やはり消えていってしまったものと思っていました。
しかしこれがどうやら大きな誤解だったようです。 実は「les rythmes digitales」という名義で、本名は「jacques lu cont」であるかのように振舞っていますが、本当の本名は「Stuart Price 」といい、フランス人ではなくイギリス人です。 要は二重に名義を被っているような状態です。
どうしてそう名乗り続けているかは定かではありませんが、当時勢いのあったフレンチクラブシーンに対するオマージュであるというのは考えすぎでしょうか。 それだけでなく様々な変名を使うのが彼は好きなようで少し前は「zoot woman」、今は「thin white duke」と言った名義を使っています。 つまり彼は「les rythmes digitales」の名義を使わなくなっただけで、実はかなり精力的に活動していたようなのです。
またremix活動の方も活発に行っていたようで、2004年にはグラミー賞に新設されたダンスミュージックの「Best Remixed Recording, Non-Classical」のカテゴリーを受賞しています。 (ちなみに曲はIt's My Life / No Doubt 。Thin White Duke名義でのremix)
ごく最近では「royksopp」の「what else is there」のremix、これが珠玉です。 実はこの盤を購入したにもかかわらず、mats3003さんの記事を読むまでこのリミキサーが彼であることにまったく気づいていませんでした。 (確かに「royksopp」の公式サイトを見ると「jacques lu cont remix」となっており、実際にリリースされている「thin white duke remix」が収録された盤についての記述が全くなかった理由が今更わかりました)
また勝手な早とちりで自分は「man with guitar」を「daft punk」と決め付けてかかっていましたが、それもまた「jacques lu cont」であるという意見の方がかなり有力なようです。
中でも特におすすめなのは2trの「only this moment」。 ポップながらも野暮ったくならないバランスが高いレベルで実現されています。 (実は上ものシンセはアイドル歌謡ギリギリと感じられる音なのですが、ボトムの音に四つ打ちではなくブレイクビーツを採用していることでバランスが保たれているような気もします)
A BATHING APEのNIGOが仕組んだ新しい遊びは、やはりとんでもないものだった。m-floのVERBAL、RIP SLYMEのRYO-ZとILMARI、そして(B)APE SOUNDSのWISEと組んだユニット、TERIYAKI BOYZのアルバム『BEEF or CHICKEN』には、ザ・ネプチューンズ、ダフト・パンク、ビースティ・ボーイズのアドロック、corneliusと目もくらむような豪華な顔ぶれが参加している。 http://magazine.music.yahoo.co.jp/spt/20051109_001/new
ゆえにこのレーベルには開始当初から「daft punk」にゆかりのあるアーティストが多数参加しています。 特に「man with guitar」というアーティストは「daft punk」の変名ユニットであると言うのがもっぱらの噂です。 (個人的にもこのレコードのジャケット写真の少し天パがかったノッポとちょっと恰幅のいい背の低い男と言う組み合わせが、どうにも彼らにしか見えません。)
訂正 「Jacques Lu Cont」こと「Stuart Price」がプロデュースを担当しているMadonnaの新譜「Sorry」に「Man With Guitar remix」なるものが収録されていることからも、どうやら「Man With Guitar」=「Stuart Price」で間違いないようです。